県内の空間線量率
県内の空間線量率は、2011年(平成23年)4月時点に比べ、除染の実施やウェザリング効果(風雨による放射性物質の移動等)、自然減衰により大幅に減少しています。
●福島県環境放射線モニタリング・メッシュ調査結果等に基づく空間線量率マップ





●空間線量率の推移
福島県では県内各地点で空間線量率を測定して公開しています。福島市では、原発事故直後(2011年3月15日18時40分)に24.24μSv/hに上昇しましたが(原発事故前の平常時0.04μSv/h)、その後、放射性物質の自然減衰や除染などにより、現在では原発事故前の空間線量率に近い数値にまで戻っています。また、この数値は海外主要都市とほぼ同水準です。


●県内の空間線量率

●世界の空間線量率

放射線に関するリスクコミュニケーション(正確な情報・知識の普及)
福島県では、放射線に関する正確な情報発信や知識普及についてさまざまな取り組みを進めてきました。
●県民を対象とした説明会など
- ・食と放射能に関する説明会
- ・避難者向け情報提供(情報紙・交流会・住民説明会など)
- ・放射線健康リスク管理アドバイザーの派遣
●理解促進のための取り組み
- ・海外政府関係者やプレスなどの招へい
- ・首都圏等消費者向けの福島県ツアーの実施
- ・外国語によるホームページやSNSの活用
●放射線教育
- ・放射線教育、防災教育の発信(授業参観・授業公開、地区の研修会などでの発表)
- ・環境創造センター交流棟「コミュタン福島」の展示や小中学生を対象とする体験型講座の実施

除染等の取り組み
●国と市町村の除染区域

除染の必要性
放射線量は、時間の経過や風雨などの自然要因により減少しますが、低減には長い年月を要します。このため、住民の健康や生活環境に及ぼす影響の低減に向け、少しでも早く放射線量を減らすため除染を実施しました。除染は、国が除染を行う「除染特別地域」と、市町村が行う「汚染状況重点調査地域」において進められてきました。
除染の効果
汚染状況重点調査地域において、除染前後の空間線量率の平均値を比較すると、宅地は42%、学校・公園は55%、森林は21%低減しており、面的除染による低減効果が確認されています。【出典】環境省調べ
面的除染の完了
県内の面的除染は、2018年(平成30年)3月19日までに帰還困難区域を除いて全て完了しました。
●住宅 雨どい・庭など
雨どいの落ち葉の除去や拭き取り、庭の天地返し、表土の削り取り

完了実績
汚染状況重点調査地区 418,897戸
除染特別地域 約23,000件
●道路 路面・側溝など
落ち葉、コケ、泥などの除去、 ブラシ洗浄や高圧洗浄

完了実績
汚染状況重点調査地区 20,476㎞
除染特別地域 約1,500ha
●農地 田畑・牧草地など
反転耕、深耕、表土の削り取り

完了実績
汚染状況重点調査地区 31,061ha
除染特別地域 約8,700ha
●生活圏森林 雑木林・道路脇など
落葉などの堆積有機物の除去

完了実績
汚染状況重点調査地区 4,513ha
除染特別地域 約7,800ha
●公共施設 学校・公園など
校庭表土の入れ替え、校舎などの高圧洗浄

完了実績
汚染状況重点調査地区 12,376施設
除染特別地域 住宅の実績に含まれる
除染により発生した除去土壌等の保管状況
仮置場や現場に保管されている除去土壌等は、順次、中間貯蔵施設への搬出が進み、保管物数は徐々に減少しています。



除染に関する県の主な取り組み
●事業者等の育成
除染業務講習会の開催や除染ハンドブックの作成

●技術的支援
市町村除染技術支援事業による効果的な除染技術検証と活用促進

●住民理解の促進
ホームページの作成や環境再生プラザでの環境回復に関する情報発信

●財政支援
市町村に対する除染対策事業交付金の交付や通学路・公園などの放射線量低減のための費用補助

中間貯蔵施設
中間貯蔵施設は、県内の除染により発生した除去土壌等を県外で最終処分するまでの間、安全に集中的に管理・保管するための施設として、国が整備した施設です。2015年(平成27年)3月に除去土壌等の搬入が開始されました。
中間貯蔵施設で一定期間保管された除去土壌等は、中間貯蔵開始後30年以内(2045年3月まで)に県外で最終処分を行うこととされています。
●整備に至る経緯



大熊町への中間貯蔵施設の
保管場搬入開始(2015年3月13日)

双葉町への中間貯蔵施設の
保管場搬入開始(2015年3月25日)
●中間貯蔵施設の配置図

中間貯蔵施設の配置図
(環境省 中間貯蔵施設情報サイトより)
除去土壌等の搬入状況
中間貯蔵施設への除去土壌等の搬入については、輸送が開始された2015年(平成27年)3月から2021年(令和3年)1月末までに、約1,038万㎥が輸送され、対象52市町村のうち33市町村の輸送が完了しました。県内に仮置きされている除去土壌等(帰還困難区域を除く)は、2021年度(令和3年度)までに、中間貯蔵施設へのおおむね搬入完了を目指す方針が示されています。

仮置場からの輸送の様子

中間貯蔵施設への搬入の様子
●累積輸送量と今後の見通し
中間貯蔵施設に関する
県の主な取り組み
福島県は、大熊町、双葉町および国と結んだ安全協定に基づき、現地確認や環境モニタリングにより、安全・安心の確保に取り組んでいます。
●輸送の状況確認

除去土壌等の積込場
●施設の状況確認

受入・分別施設
●モニタリング調査

地下水のモニタリング
●環境安全委員会

環境安全委員会の様子
●専門家会議

専門会議の様子
廃棄物の処理状況
●災害廃棄物
災害廃棄物が発生した46市町村のうち、市町村が処理を行う地域については、処理量304万トンが全て終了しています(国が代行処理している一部の焼却灰処理を除く)。また、国が処理を行う地域では、処理量243万トンで、現在も処理を継続しています(2020年12月末日現在)。
●特定廃棄物
県内の特定廃棄物(指定廃棄物(10万Bq/kg以下)や汚染廃棄物対策地域のがれき等)は、既存の管理型処分場(旧フクシマエコテッククリーンセンター)を活用して整備された特定廃棄物埋立処分施設(富岡町)で埋立処分が進められています。搬入を開始した2017年(平成29年)11月から2021年(令和3年)1月末までに約16万3千袋が埋立処分されています。

特定廃棄物埋立処分施設
環境回復のための調査研究等
研究拠点の整備
原子力災害からの「環境回復と創造」に向けた取り組みを行う総合的な拠点として、三春町に福島県環境創造センターを整備し、環境放射能等モニタリングや調査研究、モニタリングデータや調査研究成果の情報収集・発信、交流棟「コミュタン福島」を活用した放射線および環境学習の支援活動を行っています。また、南相馬市に環境放射線センターを整備し、原⼦⼒発電所周辺地域のモニタリングを行っています。



国内外の研究機関等との連携
福島県では、国際原⼦⼒機関(IAEA)との間の協⼒プロジェクトや、⽇本原⼦⼒研究開発機構(JAEA)、国⽴環境研究所(NIES)および国⽴科学博物館などとの連携による調査研究、環境学習などを⾏っています。

福島県・JAEA・NIESとの連携協定式

IAEA協力プロジェクト
福島第一・第二原子力発電所の廃炉
福島第一原子力発電所の
廃炉に向けた取り組み
事故を起こした福島第一原子力発電所(立地町:大熊町・双葉町)の1~4号機については2012年(平成24年)4月19日に、事故に至らなかった5・6号機も2014年(平成26年)1月31日に廃炉が確定しました。現在、「東京電力ホールディングス(株)福島第一原子力発電所廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」(以下「中長期ロードマップ」という。)に基づき、国と東京電力により廃炉に向けた取り組みが進められています。
●中長期ロードマップ
中長期ロードマップは、福島第一原子力発電所の廃炉を進めていく上で、基本的な考え方や放射線によるリスクを下げるための主な取り組みである「汚染水対策」、「使用済燃料の取り出し」、「燃料デブリの取り出し」、「廃棄物対策」の目標工程等について国が定めたものです。2011年(平成23年)12月に策定され、2019年(令和元年)12月に5回目の改訂が行われました。

福島第一原子力発電所 1号機から4号機
(航空自衛隊撮影)
●汚染水対策
汚染水は、事故により原子炉から溶け落ちた燃料デブリに、冷却するための注水や雨水・地下水等が触れることで発生します。汚染水対策は、「汚染源に水を近づけない」、「汚染水を漏らさない」、「汚染源を取り除く」の3つの方針のもと、さまざまな対策が講じられています。





●使用済燃料の取り出し
原子炉で発電に使用された核燃料(以下「使用済燃料」という。)は、運転停止後も熱を出しつづけるため使用済燃料プールでしばらくの間冷却する必要があります。事故から時間が経過し、使用済燃料の冷却が進んでいることから福島第一原子力発電所では安全に廃炉を進めるため、原子炉建屋からの使用済燃料の取り出しが進められています。作業工程は、水素爆発で散乱したがれき等の撤去や内部調査を行った後、燃料取り出し設備を新たに設置し、取り出しを行います。


●燃料デブリの取り出し
1~3号機の原子炉には、溶融した燃料と原子炉構造物が混ざり冷え固まった「燃料デブリ」があります。原子炉の内部調査は、放射線量の比較的低い2号機が先行して進められ、2019年(平成31年)2月には燃料デブリに初めて接触しました。現在は、燃料デブリの取り出しに向けて、遠隔操作ロボットによる内部調査とロボットアームの開発が進められています。

格納容器内調査ロボット
(提供:国際廃炉研究開発機構)

燃料デブリ接触
(提供:東京電力)

ロボットアーム
(提供:国際廃炉研究開発機構)
●廃棄物対策
がれきや伐採木、保護衣などの焼却を行う雑固体廃棄物焼却設備(2016年3月運用開始)やその焼却灰を保管する固体廃棄物貯蔵庫(2018年2月運用開始)が整備されました。今後は、固体廃棄物貯蔵庫の増設に加え、金属やコンクリート等の不燃物の減容設備や汚染水の浄化により発生する廃棄物の貯蔵施設が整備される予定です。

雑固体廃棄物焼却設備
(提供:東京電力)

固体廃棄物貯蔵庫
(提供:東京電力)
福島第二原子力発電所の
廃炉に向けた取り組み
東京電力は、2019年(令和元年)7月31日付けで福島第二原子力発電所(立地町:楢葉町・富岡町)1~4号機までの全ての原子炉について事業廃止することを決定し、その後9月30日に経済産業省に電気事業法に基づく届け出を行い、廃炉が確定しました。今後、原子力規制委員会による廃止措置計画の認可や県および立地町の事前了解を得た後、廃炉作業に着手する予定です。

福島第二原子力発電所 全景
(提供:東京電力)
福島県の安全監視体制
廃炉安全監視協議会
2012年(平成24年)12月7日設置
『福島県原子力発電所の廃炉に関する安全監視協議会』は、さまざまな専門分野の学識経験者、県、関係13市町村で構成され、会議や立入調査により、廃炉に向けた取り組みやトラブルへの対応状況などを監視し、その結果を踏まえて国や東京電力に申し入れを行っています。




廃炉安全確保県民会議
2013年(平成25年)8月4日設置
『福島県原子力発電所の廃炉に関する安全確保県民会議』は、関係13市町村の住民代表、各種団体、学識経験者で構成され、国と東京電力が進める廃炉に向けた取り組みを会議や現地調査を通じて県民目線で確認しています。




現地駐在職員の配置
廃炉作業の監視活動を強化するため、2014年(平成26年)4月から『現地駐在職員』を楢葉町役場に配置し、現地確認やトラブル時の迅速な情報収集などを行っています(2016年7月以降は楢葉原子力災害対策センターに配置)。


原子力に関する専門家の配置
県では、原子力に関する専門家として県施策への提言や監視業務の助言などを行う『原子力対策監・原子力専門員等』を2013年度(平成25年度)から配置しています。
原子力防災
福島県原子力防災訓練の実施
福島県では、国、県、市町村および関係機関職員の原子力防災対応能力の向上を図るとともに、住民に対する原子力災害時に取るべき行動の周知を目的として、2013年(平成25年)から原子力防災訓練を実施しています。




福島県原子力災害対策センターの
整備・運用
福島県では、原子力災害が発生した際に、国、県、関係市町村、防災関係機関などが一堂に会し、災害への応急対策を講じていく施設として南相馬市と楢葉町に原子力災害対策センター(オフサイトセンター)を整備し、運用を開始しました(2016年7月12日開所)。新たに整備するにあたり、東日本大震災・原子力発電所事故の教訓を生かし、建物に免震構造や放射線防護対策を講じるとともに、専用の通信回線や衛星携帯電話を設置するなど通信の多重化を図っています。
南相馬原子力災害対策センター

楢葉原子力災害対策センター

Jヴィレッジの復興
●事故対応のための前線基地
Jヴィレッジは、1997年(平成9年)に日本初のナショナルトレーニングセンターとしてオープンして以来、「サッカーの聖地」として多くの方に親しまれてきました。
しかし、福島第一原子力発電所事故により、半径20㎞が警戒区域に設定され、Jヴィレッジは、事故対応の前線基地として福島県の復興を支えました。


●復興のシンボルとして再始動
Jヴィレッジの再生のため、震災前の状態に戻すだけではなく、さらに魅力ある施設とするため、天候や季節に影響されずに利用できる全天候型練習場やコンベンション機能を備えた宿泊棟を新たに整備し、2019年(平成31年)4月20日に全面再開し、福島県の復興のシンボルとして再始動しました。

