平成23年3月11日午後2時46分。
あの時から、私たちを取り巻く環境は一変しました。巨大地震と大津波、その後の原発事故という未曽有の複合災害は、多くの尊い命を奪い、甚大な被害をもたらしました。そして、多くの方々が古里を離れ、今なお避難生活を続けておられます。原発事故によってもたらされた風評は、観光業や農林水産業を始め、様々な分野に大きな影を落としました。
その後、本県は復旧・復興に向け、県民一丸となって挑戦を続けてまいりました。被害を受けた公共土木施設の復旧工事がほぼ完了し、農林水産業については、農地の除染や徹底したモニタリング検査と安全性の発信、ブランド化の推進により、農林水産物の価格も一部を除き少しずつ回復してきています。震災直後、大きく落ち込んだ観光客入込数も、大河ドラマの放映やデスティネーションキャンペーンなどにより、震災前に近いレベルまで回復してきております。また、全国新酒鑑評会で史上初となる金賞受賞数7年連続日本一を達成したほか、県産農産物の輸出量が震災前を大きく上回るなど、県産品への評価も高まっています。
さらに、避難地域においては、避難指示の解除を始め、JR常磐線・常磐自動車道の全線再開、学校や病院の再開、ロボット、再生可能エネルギー等の研究施設の整備が進むなど、復興に向けた取り組みは、着実に成果となって現れてきました。
しかし、震災と原発事故からの復興はいまだ途上にあり、時間が経つにつれて風化も進んでいます。さらには、令和元年東日本台風や令和3年2月13日の福島県沖地震等からの復旧、新型コロナウイルス感染症、地方創生・人口減少対策など、課題は山積しております。
今後も、県民の皆さん、そして福島に心を寄せていただいている国内外の多くの方々と手を携えながら、復興のあゆみを一歩一歩進め、ふるさと福島の復興を成し遂げていかなければなりません。
今回、震災と原発事故から10年の節目を迎えるに当たり、県内外の多くの方々に、これまでの復興への取り組みや「ふくしまの今」、県民の皆さんの声を広く発信するとともに、震災の記録と記憶、県民のたゆまぬ努力と全国から頂いた心温まる応援を後世に残していくために、本記録誌を発刊することといたしました。
たくさんの方々に本県の現状や思いを共有していただければ幸いです。
これからも、前例のない複合災害からの復興を目指し、新スローガン「ひとつ、ひとつ、実現する ふくしま」のもと、福島の明るい未来に向けた挑戦を継続してまいります。
福島県知事 内堀雅雄