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遠藤 雄幸 遠藤 雄幸

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遠藤 雄幸さん

[相双:川内村]

川内村 村長

平成16年から村長に就任(現在5期目)。役場機能を移した被災町村の中で初めてとなる帰村宣言を、平成24年1月に発表した。

村長の仕事はクリエイティブ

時代の流れには柔軟に

INTERVIEW 地域から見つめる、あの日から、これから

川内村のDNA

 川内村の村民には、時代の変化や外から入ってくる風に、我慢強く柔軟に対応してきたDNAがあり、それを私も受け継いでいると感じています。逆境に打たれ強く、たくましいというのは民度の高さと言えるのではないかと思います。

帰村宣言への思い

 平成24年の段階では、全員で戻るのは難しいと考えていました。自身でチェルノブイリにも行きましたし、村内のデータ的な裏付けは取っていましたが、本格除染は帰村宣言の後という未知数な部分は多かった。帰りたい人だけ帰っていいという、制限や制約のある宣言ではありませんでしたが、最大の敵は「時間」です。時間がたつほど、村に戻るのは難しくなる。戻れる可能性があるなら戻ろう、その一心でした。

村民たちの懐の深さと移住者の関係

 令和2年現在、川内村の帰還率は約8割で、その人口の4割を移住者が占めています。川内村には移住者も受け入れて、コミュニティを形成していく懐の深さがあります。震災後に村に来た人たちが仲間になって、一石を投じてくれたり、さまざまな形で情報発信してくれたりするのは心強く、間違いなく復興を進めていく原動力になっています。
 今後、移住者たちが地域に定着して、村が維持されるのなら最高だと思います。昔からそういう歴史は繰り返されています。背景や思いが同じような人たちだけでは、人生は面白くないですからね。

「守りたいもの」があるから村長を続けている

 村を動かすためには、イマジネーションを働かせ、五感を使ってさまざまな仕事に取り組む必要がある。ハードな部分はありますが、クリエイティブな仕事をさせてもらえるのは大きな喜びです。とてもポジティブな仕事だと感じています。村の人たちは震災で失って初めて、当たり前の日常がどれだけ大切だったかに気づきました。森の豊かさ、清流の冷たさ、木々のざわめき、そういった原風景が残る土地で暮らして働くこと。その生きがい、誇りを取り戻していくことが復興。「誰かのために働きたい」と思えることは幸せですね。

震災を経験した村として伝えたいこと

 過去を嘆いたり、未来を憂いても何も始まりません。現実をしっかり受け止め、愚直に進んでいけば道は開ける。客観的なデータを収集していくことで可能性は広がっていきます。子どもたちの未来のために、私たちが動いて、希望をつないでいかなくてはなりません。震災から10年たった今から広がっていく川内村の未来に期待していてください。

帰村宣言する遠藤村長(2012年1月31日)ⓒ共同通信社