農林水産業の再生と挑戦
福島県の農林水産業は、地震とそれに伴う津波により甚大な被害を受け、農業全般の産出額は減少しました。農業産出額の回復に向けて、農林水産業の再生に向けた取り組みや県産農林水産物の魅力づくり、ブランド化の推進、食の安全に関する発信などを進めています。
被災地域の復旧・再生
津波被災地の営農再開
津波被害からの農業再開に向けて、新たな農業を展開するため、新地町や南相馬市、いわき市などの13地区において、農地の大区画化、用排水路、農道の整備などを一体的に推進し、1,564ha(90.5%)で営農再開が可能となりました(2020年6月現在)。
大区画ほ場整備 夏井地区(いわき市)
大規模大豆栽培 作田前地区(新地町)
海岸防災林の整備
沿岸部の農地などを守るため、相馬市や南相馬市、浪江町などの9地区で、これまでの飛砂、風害、潮害防備などの災害防止機能に加え、津波対策として林帯幅を200mに拡大した防災林の整備を進めており、467ha(96%)で整備に着手しています(2021年3月現在)。
農地・農業用施設の復旧
農地・用水路・ため池等の復旧も進められ、1,837ヶ所(復旧率87%)の工事が完了しています(2020年3月現在)。
大戸浜排水機場(新地町)
海岸防災林の整備
沿岸部の農地などを守るため、相馬市や南相馬市、浪江町などの9地区で、これまでの飛砂、風害、潮害防備などの災害防止機能に加え、津波対策として林帯幅を200mに拡大した防災林の整備を進めており、467ha(96%)で整備に着手しています(2021年3月現在)。
治山・林道施設の復旧
治山施設・林地(山腹崩壊等)は28ヶ所(復旧率100%)、林道施設は160ヶ所(復旧率98%)で工事が完了しています(2021年3月末見込み)。
水産研究拠点施設の復旧
栽培漁業の再開を図るため、震災で全壊した水産種苗研究所に代わり、相馬市に水産資源研究所を整備しました。また、原子力災害に起因する新たな研究課題に対応するため、いわき市に水産海洋研究センターを整備しました。
水産資源研究所
(2019年2月供用開始)
水産海洋研究センター
(2019年7月供用開始)
新たな特産品へのチャレンジ
被災地域では、先端技術を取り入れながら、新たな特産品栽培への挑戦も進んでいます。
トルコギキョウ、カンパニュラ
(浪江町、新地町ほか)
先端技術の現地実証によるトルコギキョウ(左)とカンパニュラ(右)を組み合わせた周年生産体系の新たな構築
先端技術の現地実証によるトルコギキョウ(左)とカンパニュラ(右)を組み合わせた周年生産体系の新たな構築
胡蝶蘭
(葛尾村)
地元の農業者らによる胡蝶蘭栽培経営体の設立
地元の農業者らによる胡蝶蘭栽培経営体の設立
アンスリウム
(川俣町)
近畿大学と連携したアンスリウム栽培の実施
近畿大学と連携したアンスリウム栽培の実施
いちご
(大熊町)
先端技術を取り入れた栽培施設による周年栽培・周年出荷の実施
先端技術を取り入れた栽培施設による周年栽培・周年出荷の実施
バナナ
(広野町)
町の新たな特産品として国産バナナ栽培の実施
町の新たな特産品として国産バナナ栽培の実施
県産農林水産物の販路拡大・魅力発信
農林水産物の消費拡大に向けた取り組み
県産農林水産物の消費拡大のため、国内外の消費者などに直接魅力を伝えるトップセールス、農産物フェアや飲食店などでの消費拡大キャンペーンを実施しています。
知事によるトップセールス
農産物フェアの実施
タイでの桃のプロモーション
常設販売店舗の拡大に向けた取り組み
県産米の取扱店舗を拡大するため、首都圏などの米穀小売店への訪問PRなどを実施しているほか、2018年(平成30年)から量販店などと連携し、福島牛や水産物を年間を通じて取扱う常設販売コーナーの確保などにより、販路拡大の取り組みを進めています。
量販店での県産米PR
福島牛の販売・PR
水産物の販売・PR
オンラインストアを活用した取り組み
県産品の新たな販売ルートとして、2017年度(平成29年度)から全国の自治体で初めて「Amazon」、「楽天市場」、「Yahoo!ショッピング」の3社と連携し、販売促進に取り組んでいます。
学校給食等での地産地消の推進
震災以降、学校給食への県産農林水産物の活用割合が減少しましたが、学校給食を活用した食育指導などを通して県産食材の使用を進めたことや食材購入費の補助などの取り組みにより、震災前の水準を超える値まで回復しました。
学校給食の県産食材活用割合
※2011年度は震災により未調査のため公表値なし
※2019年度は令和元年東日本台風により後期調査未実施のため公表値なし
県産農産物の輸出
震災直後、県産農産物の輸出量は大幅に落ち込みましたが、プロモーションや新たな輸送技術の導入などにより、2017年(平成29年)以降、震災前を大きく上回っています。
海外輸出の主な実績
●タイ、インドネシアへの輸出量に占める県産桃の割合が4年連続日本一(2016~2019年)
●マレーシアへの県産米の年間輸出目標を100tで合意(2017年8月)
●県産米の英国への輸出倍増・フランスなどへの販売拡大合意(2018年3月)
●ベトナムへの県産なしの初輸出(2017年8月)
県産農産物の輸出量の推移
マレーシアでの
知事トップセールス
ベトナムでの農産物フェア
県産食品の輸入規制の状況
原発事故直後、県産食品の輸入規制を行った国と地域は54ありました。食品の安全性確保の取り組みや農林水産物の魅力の発信などに努めてきた結果、これまで39の国と地域で規制が撤廃されました(2021年1月29日現在)。
県産食品の輸入規制を解除した国・地域39カ国
カナダ、ミャンマー、セルビア、チリ、メキシコ、ペルー、ギニア、ニュージーランド、コロンビア、マレーシア、エクアドル、ベトナム、イラク、豪州、タイ、ボリビア、インド、クウェート、ネパール、イラン、モーリシャス、カタール、ウクライナ、パキスタン、サウジアラビア、アルゼンチン、トルコ、ニューカレドニア、ブラジル、オマーン、バーレーン、コンゴ民主共和国、ブルネイ、フィリピン、モロッコ、エジプト、アラブ首長国連邦、レバノン、イスラエル
県産食品の輸入を規制している国・地域15カ国
県産農林水産物のブランド力向上・競争力強化
県オリジナル品種の開発
オリジナリティによる競争力の強化などのため、オリジナル品種の開発や生産拡大を推進しています。
◆主食用米「福、笑い」「天のつぶ」
「里山のつぶ」
◆酒造好適米「福乃香(ふくのか)」
米食味ランキング
県産米「特A」獲得数
3年連続日本一!
日本穀物検定協会が2020年(令和2年)2月26日に発表した令和元年産米食味ランキングで、福島県産米は4銘柄で最高位の「特A」を獲得し、3年連続獲得数日本一となりました。
◆ほんしめじ(ふくふくしめじ)
福島県は日本で初めて自然に近い環境でほんしめじの栽培に成功しました。オリジナル品種「ふくふくしめじ」の本格的な生産・販売を目指し、県内にモデル地区を設定し、栽培普及を進めています。
県オリジナル品種「ふくふくしめじ」 販売促進のための試食会の実施県産水産物の競争力強化の取り組み
県産水産物への風評払拭と販路拡大を目的として、第三者による認証制度(水産エコラベル認証制度)の取得支援や認証を取得した水産物の流通支援、高鮮度出荷技術の開発支援などによる競争力強化の取り組みを行ってきました。
●水産エコラベル
認証実績
(2020年4月現在)
生産段階認証:
14件
流通加工段階
認証:10件
ヒラメ、ホシガレイの
稚魚の放流再開
2018年度(平成30年度)に供用開始した水産資源研究所において、震災後初めて生産されたヒラメ、ホシガレイを2019年(令和元年)6月に放流しました。ヒラメは、公益財団法人福島県栽培漁業協会が震災前と同規模となる稚魚100万尾を生産、放流し、ヒラメ栽培漁業の再開に向けた大きな一歩となりました。
ホシガレイの放流
また、ホシガレイはヒラメ以上に高値で取り引きされるため、新たな栽培漁業対象種として技術開発に取り組んでおり、過去最大規模となる11万尾を生産、放流しました。
ホシガレイの放流
6次化商品の販売強化
6次化商品の商品力向上および販路拡大のため、共通ブランド「ふくしま満天堂」を2017年(平成29年)に立ち上げ、現在は県内23ヶ所で商品を販売しています。首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)のスーパーマーケットでも特設ブースを展開し、販路の拡大にも取り組んでいます。また、毎年、登録されたふくしま満天堂商品の中から、おいしい6次化商品を選出するため、審査会と表彰式も実施しています。
登録事業者数:65事業者
販売商品数:241商品
(2021年1月時点)
ふくしま満天堂特設ブース
「ふくしま満天堂グランプリ2020」
表彰式
メディアやSNSを活用した魅力発信
TOKIOの皆さんにご出演いただいているテレビCMやSNSなどの各種媒体を活用して、国内外に向けて県産農林水産物の魅力、生産者の誇りや安全性の発信を行っています。
「ふくしまプライド。」 ロゴ
県農業産出額の推移
ふくしまイレブン
福島県には、清らかな水と寒暖の差が作り出すお米、気候風土を生かした野菜、夏の太陽を十分に受けて実る桃、豊かな自然に囲まれすくすくと育つ福島牛、それぞれの味わいが魅力の地鶏など、優れた農林水産物がたくさんあります。福島県の多彩な農林水産物を代表する生産量上位の11品目を「ふくしまイレブン」と呼んでいます。
第69回全国植樹祭・
ふくしま植樹祭の開催
2018年(平成30年)6月10日、天皇皇后両陛下(当時)のご臨席を仰ぎ、南相馬市原町区雫地内の海岸防災林整備地を主会場として、「第69回全国植樹祭」を開催しました。県民参加の森林づくり活動の推進や東日本大震災からの復旧、福島第一原子力発電所事故の影響を受けた森林の再生を目指すとともに、震災以降の支援に対する感謝の気持ちと復興に向かって歩み続ける福島の姿を発信しました。
また、2018年(平成30年)11月からは、全国植樹祭の開催理念を引き継ぎ、未来へつなぐ希望の森林づくりを発展させるため、「ふくしま植樹祭」を開催しています。
天皇陛下(当時)
によるお手植え
皇后陛下(当時)
によるお手播き
第2回ふくしま植樹祭
~ABMORI~
第2回ふくしま植樹祭
~ABMORI~