壁を乗り越えて悲願の世界タイトル獲得
常に世界一を目指してレースに挑んできました。なかなかその目標に手が届かず、もがいて足踏みしているところに震災があり、2011年は私生活でもスポーツ人生でも厳しい1年でした。
震災後の厳しい環境のなかでも、県民のみなさんから多くの支援をいただき、トレーニングに打ち込むことができました。震災と原発事故で厳しい状況に立たされましたが、そこで得た福島県民の団結力こそが、私たちの大きな力となりました。
チーム福島として団結し、復興と歩みを重ねながら着実に蓄え続けた力が、私たちに世界一の称号をもたらしました。まさに一歩一歩着実に歩んできた結果でした。
世界大会シリーズ終了後も終わらない空の夢
2016年、われわれのチームにできることを考え2025年に向けた行動計画を立てました。パイロットやアスリートとしてのノウハウを、還元できないかと考え、たどり着いたものが、若い世代の人材育成でした。
スカイスポーツの選手を目指すだけでなく、自分自身で夢のかなえ方や人生の歩み方を考える力を身につける。高校進学前に自分の可能性や視野を広げることで、より充実した人生を歩んでもらうためのプログラムとして「空ラボ」というプログラムを行なっています。
先を見据える力というのは、僕たちが世界チャンピオンを目指して身につけた力そのもの。それを若い世代に伝えることには大きな意義があり、人生100年時代といわれる価値観にも沿ったプログラムだと確信しています。
また「ユースパイロットプログラム」として、 高校生対象のパイロット教育もスタートしま した。習得能力が高い若年層が訓練を受け、20才になるころには教官として後進を指導できる立場になってもらいたいと思っています。
他にも県のテクノアカデミーと提携して、技術者育成や工業面での技術提供に参画して、産業技術の強化をサポートしています。今は産業集積の支援と人材育成の支援を柱に貢献できるように日々取り組んでいます。
リーダー教育で見えた未来への光 子どもたちの無限の可能性
プロジェクトを通して、子どもたちの吸収力には驚かされています。未来の優秀なリーダー教育には、多様な体験が必要だと思います。多感な時期だからこそ、多角的な視点で僕たち民間が連携し、サポートしていきたいと思います。
アスリートに関わらず、人生で大切なものは情熱や想像力です。頭が柔らかい若い時期にどれほど多くのものを見て、多くのことを感じられるか。それを支えることが自分の役割のひとつだと思っています。
スカイスポーツで実感した「好き」が持つパワー
僕はスカイスポーツがシンプルに好きです。むしろ、好きなことだけをやっているという感覚です。ワークライフバランスという言葉がありますが、僕の場合はワークライフミックス。スカイスポーツに関わることが楽しいですし、全てのプログラムにやりがいを感じています。
もちろん、世界一を目指すトレーニングはかなりきついものですが、それを超える想いや、限界の向こうの世界を見たいという探究心が原動力です。
若い世代にも自分の心の中を見つめる機会や経験をしてもらいたい。その中で好きなものを見つけることが、豊かな人生を歩む第一歩になると考えています。
これからのふくしまで自身が果たす役割
震災と原発事故以来ハンディが残る福島県ですが、だからこそチャンスが眠っている場所だと思っています。福島イノベーション・コースト構想や福島ロボットテストフィールドをはじめ、さまざまな施策がめまぐるしく動いています。10年の間に計画していたことが実り出して、大きなエネルギーに満ちて、表出してきているのだと思います。
そのチャンスを的確に確実に子どもたちや県内の人々につないで、さらなるエネルギーを生むきっかけを作っていくのが僕たちの役割です。それぞれが持つ将来のビジョンを引き出し合い高め合い、相乗効果で未来を築いていく。まさに復興から創生へと、フェーズが変遷しています。
僕の理想は、みんなでできることを持ち寄って社会をつくること。それぞれの分野でそれぞれが輝けるものごとで発展していくことです。自分も福島県民約180万人のうちのひとりとして、ここで生きていきたいと思っています。