事実を客観的に伝えることが大切
震災から1年たったあたりから、「震災の話を聞かせてくれ」という依頼が県外や海外からも来るようになり、震災を語り伝える「語り人」活動を事業としてはじめることにしました。怒りや反発だけでは、聞く人の心は動きません。客観的な事実と、当事者だからこその体験を限られた時間で相手に伝わるように話す練習をしました。
074
[相双:富岡町]
NPO法人 富岡町3・11を語る会 代表
「人の世に起こったできごとは、人によって語らなければならない」を信条に、復興への思いを声にのせてつないでいく「語り人(かたりべ)」を育成。
生の声の力
記憶を紡ぎ伝える
「語り人」
INTERVIEW 地域から見つめる、あの日から、これから
震災から1年たったあたりから、「震災の話を聞かせてくれ」という依頼が県外や海外からも来るようになり、震災を語り伝える「語り人」活動を事業としてはじめることにしました。怒りや反発だけでは、聞く人の心は動きません。客観的な事実と、当事者だからこその体験を限られた時間で相手に伝わるように話す練習をしました。
自分の話を聞いて涙する人がいる、握手して「頑張ってね」と言ってくれる人がいる、そういう経験をして、この活動を生きがいのように感じる語り人もいます。「みんなに助けてもらって、ここまで生きてこられました。助けてくれた人たちへの恩返し」という思いも込めて、この活動を続けています。
私には「人の世に起こったできごとは、人によって語らなければならない」という信念があります。生の言葉が発するエネルギーはとても大きいと思うのです。そのエネルギーを受け止めてくれた人から、語り手がもらうエネルギーもすごい。語る人と聞く人の間でエネルギーの交換がされ、共感が生まれるのです。語るということが、人のつながりの第一歩だと思っています。
双葉町に「東日本大震災・原子力災害 伝承館」ができました。この施設には語り部のコーナーが設けられています。展示を見るだけではなく、生の声を聞くことができます。富岡町3・11を語る会も、3名の語り人が登録しています。今後の目標は、“震災を体験していない”語り人を育てること。震災後に生まれた子どもたち、または震災を覚えていない子どもたちでも、震災を自分ごととして考え、後世に語り継いでくれるような人材を育てていきたいです。