避難を余儀なくされ価値観に変化
震災前は都内でITベンチャー企業の役員をしており、南相馬市小高区でリモートワークをしていましたが、原発事故で避難を余儀なくされた時に価値観がガラリと変わりました。食料もガソリンも手に入らず、避難所には寝る場所さえないということを経験し、収入があっても「お金」が通じない世界になったら生きていけないと身に染みました。
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[相双:南相馬市]
株式会社小高ワーカーズベース 代表取締役
平成26年に株式会社小高ワーカーズベースを設立。「地域の100の課題から100のビジネスを創出する」をミッションに、持続可能な地域社会の実現を目指す。
課題こそビジネスチャンス
多様性が光る魅力的な町へ
INTERVIEW 地域から見つめる、あの日から、これから
震災前は都内でITベンチャー企業の役員をしており、南相馬市小高区でリモートワークをしていましたが、原発事故で避難を余儀なくされた時に価値観がガラリと変わりました。食料もガソリンも手に入らず、避難所には寝る場所さえないということを経験し、収入があっても「お金」が通じない世界になったら生きていけないと身に染みました。
小高区に戻ったとき、町が抱えている課題はたくさんありました。けれど、僕にはそれが「ビジネスの種」に見えました。不便を解決するものやサービスを生み出すため、まずはコワーキングスペースをつくることからはじめました。現地を訪れて議論するその熱量を、現地で受け入れる場所が必要だと思ったんです。
ここでチャレンジしたいという若者が徐々に増えてきて、小高区はとても面白い町になってきました。「Next Commons Lab 南相馬」事務局の管理運営を通じて、起業家の誘致もしています。1,000人雇用する1つの企業よりも、10人雇用する100人の起業家がいた方がいい。また大きな災害が起きた時に、数社が立ち行かなくなっても、他の会社や若い人たちが支え合う。そうして新陳代謝を繰り返しながら町が存続していく道を模索しています。
これからも会社としてきちんと利益を出して事業を継続させつつ、やりたいことも実現していきたい。起業家の誘致も、もっと加速させていきたいと思っています。僕の会社の社員は、ほとんどがUターンしてきた人たちです。この町で暮らしていた若者たちが戻ってきて「この会社に勤めたい」「自分もここで起業したい」と思えるような会社づくり、まちづくりをしていきたいです。