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小針 沙織 小針 沙織

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小針 沙織さん

[県北:本宮市]

大天狗酒造株式会社 杜氏

本宮市唯一の蔵元の杜氏。震災後、実家の酒蔵に入り、酒造りに励んでいる。風評被害や自然災害などさまざまな困難を乗り越え、伝統の味を守る意欲をみせている。

多くのサポートに感謝

酒造りの意欲、新たに

INTERVIEW 地域から見つめる、あの日から、これから

老舗蔵元の伝統と歴史を継ぐ

 明治5年に創業した蔵元の家に生まれ、父が4代目の社長を務めています。大学卒業後は別の会社に就職しましたが、「後継者がいなければ伝統が途絶えてしまう」という漠然とした意識がありました。3姉妹の長女という使命感だったのかもしれません。震災後の平成26年、実家に戻りました。

県清酒アカデミーで酒造りの基礎を学ぶ

 福島県酒造組合が運営する県清酒アカデミーに入校し、基礎を学びました。日本酒は子どもの頃から身近なものではありましたが、酒造りは別物だと実感。他の蔵元の方々と交流し、目からうろこが落ちるような発見もありました。充実した体験を通して「酒造士」の認定を受け、杜氏になりました。風評の払拭のため県内外のイベントなどに出向き、安全性や日本酒の魅力をPRしました。

台風被害で酒造りがピンチに

 令和元年10月の「令和元年東日本台風」は、本宮市に甚大な被害をもたらし、当社の工場も浸水しました。機械が故障し酒米も使えなくなり、絶望的な状況でしたが、県内の酒蔵の協力もあり、酒米や精米の手配をして何とか酒を仕込むことができました。ニュースやSNSなどで被害を知った友人たちが掃除の手伝いに来てくれましたし、クラウドファンディングを実施した時は、県内外や外国の方からも支援をいただきました。たくさんの方の協力や支援が、くじけそうになった家族や従業員の心を支えてくれました。

日本酒を通して地域を盛り上げたい

 地域の祭りでは酒を奉納したり、お神酒をいただいたりするなど、日本酒は昔から生活に欠かせないものでした。また、ネット販売やオンライン飲み会、酒蔵見学などIT時代に合った方策にも取り組んでいます。私の使命は、地域の皆さんに愛され、長く飲んでもらえる日本酒を造ることだと考えています。日本酒は奥が深く、日々の研究はまだまだ続きます。