冬の味覚 オレンジに輝くあんぽ柿
あんぽ柿は伊達市特産の干し柿の一種です。渋柿の皮をむいて硫黄で燻蒸することで、鮮やかなオレンジ色を保ちながら中はトロトロに。乾燥の過程で熟成が進み、とても甘くなります。甘味料や添加物を使用せず、栄養価が高い食物繊維も豊富な自然食品です。このあたりでは大正時代頃から農家の冬期間の仕事として技術開発が進み、伊達市は今でも全国的な一大産地として生産を続けています。
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[県北:伊達市]
宍戸農園/JAふくしま未来農の達人(あんぽ柿)
あんぽ柿の一大産地として知られる伊達市梁川町五十沢地区の農家。震災後に加工自粛を余儀なくされたあんぽ柿の安全性を調査・実証して、出荷再開に貢献した。
一粒一粒が地域の誇り
あんぽ柿の歴史を継承する
INTERVIEW 地域から見つめる、あの日から、これから
あんぽ柿は伊達市特産の干し柿の一種です。渋柿の皮をむいて硫黄で燻蒸することで、鮮やかなオレンジ色を保ちながら中はトロトロに。乾燥の過程で熟成が進み、とても甘くなります。甘味料や添加物を使用せず、栄養価が高い食物繊維も豊富な自然食品です。このあたりでは大正時代頃から農家の冬期間の仕事として技術開発が進み、伊達市は今でも全国的な一大産地として生産を続けています。
震災前は皇室への献上品としても出荷していたあんぽ柿ですが、原発事故の影響で加工自粛を余儀なくされました。ショックでしたね。収穫した柿を廃棄するときは涙が出ました。
それからは、当時のJA伊達みらい管内の柿の木25万本の除染や、セシウムがどのように実に吸収されていくのかをJAや研究機関と一緒に調査しました。食品検査をクリアできるレベルだと判断できたのは2年後。そして平成25年の冬、あんぽ柿の出荷再開に至りました。
あんぽ柿は専用の検査機器を通して、ひとつひとつ食品検査を行っています。実証栽培や食品検査機の製造など、出荷再開を支援してくれた国や県のみなさんには感謝しかありません。2年ぶりに出荷したあんぽ柿を食べた人から「おいしいね!」と言われたときは、うれしかった。待っていてくれた人がいたんです。それまでの苦労が報われました。
あんぽ柿には、先人たちが利益を顧みずに試行錯誤して残してくれた技術が詰まっています。地域の人と関わりながら手をかけてひとつのものをつくる。昔から脈々と受け継がれているこの文化は、今で言う6次化産業です。また、この地域であんぽ柿が作られはじめて、今年で100年を迎えます。今後もあんぽ柿の可能性を探りながら地域の誇りを継承していきます。